12月、恒例行事の「静岡クリスマス講演会」が、今年も開催でき感謝でした。会場準備は、事前に集会員の担当を決めたために、あっという間に完了。天気が良ければ、6階の会場から雪に覆われた富士山を眺めることができるが、今年は厚い雲に覆われた。参加者は32名、内6名が初参加で嬉しかった。初めに西澤が「主よ、憐れんでください」、その後小田弘平兄が「クリスマスの基本‐救いと不作為‐」の演題で登壇した。
                  主よ、憐れんでください              西澤正文
今年も、残り3週間、この一年を振り返ると、いろいろな出来事があった。北海道地震、いくつもの台風が到来し、甚大な自然災害被害等々、そんな中で最も心が痛んだのが、両親による虐待によって5歳の女の子が亡くなった報道であった。
▢虐待死「もうおねがい ゆるして」
 今年、3月2日 まだ冬の寒い風が吹く季節、船戸結愛ちゃんが、両親の虐待を受け、わずか5歳の命でこの世を去った。死因は、低栄養状態や免疫力低下で発症した肺炎による敗血症。部屋から見つかった両親への謝罪の言葉は、結愛ちゃんが亡くなる10日前まで平仮名で書かれていた。両親から平仮名の練習をするよう言われ、毎朝午前4時1人で起き練習に励んだ。その成果があり、自分の気持を文字で表現できた。
  もうパパとママにいわれなくても   しっかりとじぶんから きょうよりも もっともっと あしたはできるようにするから
  もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします  …………
  これまでどれだけあほみたいにあそぶって あほみたいだからやめるので
  もうぜったいぜったいやらないからね ぜったいやくそくします
 5歳の子が、おねがい、ゆるして、ゆるして、おねがいします…親に向かって言う言葉だろうか。苦しい、苦しいと訴えている気持ちがにじんでいる。これほど人々の心を捉えた言葉は、最近では珍しいと思う。死後、いろいろなテレビ局のニュースで報道されたが、悲しみのあまり、何人かの女性キャスターが涙を浮かべ報道された姿が印象的だった。
▢憐れむとは?
 聖書の中に「憐れんでください」の言葉が、よく出て来る。先の結愛ちゃんの「おねがい もうゆるして」の気持ちに通じ、「これ以上頑張れない 助けて」の切羽詰まった叫び声に聞こえる。私達は社会的な動物で一人では生きられない。そのために、常日頃、人間関係を大切にし、良好な関係を保つよう心掛ける。結愛ちゃんの「おねがい もうゆるして」は、「憐れんでください」の言葉に重なり、生きていく上で「憐れむ」ことは、大切である。
▢イエスの憐れみについて    
・徴税人、罪人を憐れむ(マタイ9:9-13)
 社会の決まり事を完全に守ると自負するパリサイ人、また、社会の決まり事を専門に学ぶ学者達は、自分を取税人、罪人達に比べ、義しい人であると考えた。イエスがそのような人達と一緒に食事することを怪しみ、弟子達に、イエスは信用できない教師だ、と告げ口した。これを耳にしたイエスは、「医者を必要とするには、丈夫な人ではなく病人である。『わたしが求めるのは憐れみである』」と言って、相手にしなかった。すべての人は、病める者、罪人であり、キリストを必要としない者など一人もない。ファリサイ人達はこのことに気づいていないのである。
 イエスは、弱い人を憐れむ私・イエスに倣いなさい、そして、社会一般ルールを守ることのできる正しい人は一人もいない、この2つを示された。
・盲人バルティマイを憐れむ(マルコ10:46-52)
 盲人が癒されたのは、イエスがエルサレムで捕らえられ、十字架上で命を落とす一週間前の出来事。イエスが通る道端に、盲人バルティマイが座っていた。盲人であり、なお且、乞食であるとは、不幸の極である。群衆は単にナザレのイエスの評判を聞き、イエスの後に従った。バルティマイは、盲人の直感というべきが、イエスはメシアだ!と確信した。そして「ダビデの子よ、私を憐れんでください」と叫んだ。盲人は単純に、唯、ひたすらに目が見えるようになりたい、と熱望し、この熱心が必ず届くと信じた。そして願いが届いた。
 イエスは、自分に頼らずに私イエスを信じなさい、また、単純な心で求めなさい、この2つを示された。 

▢むすび
 最後に再び結愛ちゃんの話に戻ります。2016年12月保護され、それから今年の3月亡くなるまでの1年4か月の間、幼心にも「私は、何のためにこの世に生まれてきただろう」と何度も思ったのではないでしょうか。
 「初めに言葉(メモ)があった 言葉(メモ)は神と共にあった この言葉(メモ)は、初めに神と共にあった」(ヨハネ1:1-2) 結愛ちゃんの残されたメモの背後に、神様がおられ、神様と共に書かれた、と信じます。「もうこんな辛いこと、悲しいこと、痛いこと、我慢できないことは、子供たちに追わせないで」と、天国から訴えているのではないでしょうか! 
 イエスと結愛ちゃんは、私達に次の3つのメッセージを送っているのではないでしょうか。①弱い人に目をかけなさい。②憐み合い、助け合いなさい。③身近なところに助けを必要とする人がいる、結愛ちゃんがいる。「主よ、憐れんでください」と呻いている人が大勢いる。そのか細い、声なき声を聞き分け、あなた達は、私・イエスに倣い、手を差し伸べなさい、と。