2019.9.22     使徒言行録7章     西澤 正文

 テーマ:主よ、この罪を彼らに負わせないでください(60)

 (はじめに)

 前章にステファノが登場した。教会生活者が増えたため、評判の良い弟子7人を選び、食事の世話についてもらうことになった。その内の一人がステファノで、不思議な業、しるしを行い、使徒たちの中で注目された。「解放された奴隷の会堂」の人たちが、ステファノと議論しても歯が立たず、そそのかし最高法院に連れ出し、偽証人を立て訴えた。法廷の席に立ったステファノは、「兄弟であり父である皆さん、聞いてください。」と弁明を始めた。命の危険にさらされているのに、気負いなく、旧約聖書に登場するアブラハム、ヨセフ、モーセを紹介した。3人の神との関係…アブラハムは約束の人、ヨセフは祝福の人、そしてモーセは選び出された人を紹介した。 

 アブラハムは、主から約束を受けた。「あなたは生まれ故郷 父の家を離れて わたしが示す地に行きなさい。 わたしはあなたを大いなる国民にし あなたを祝福し、あなたの名を高める 祝福の源となるように。」(創12:1-2) 

 ヨセフは、父に偏愛され、兄たちから羨ましがられ、エジプトに売られた。数年後、兄や父が食料を求めエジプトに来て、ヨセフと再会。「今は、わたしをここへ売ったことを悔やんだり、責め合ったりする必要はありません。命を救うために、神がわたしをあなたたちより先にお遣わしになったのです。」(創45:5)  

 その後、エジプトでモーセが誕生した。シナイ山近くの荒れ野において、芝の間から神に声をかけられた。「今、行きなさい。わたしはあなたをファラオのもとに遣わす。わが民イスラエルの人々をエジプトから連れ出すのだ。」

 

 

(出エ3:10) イスラエルの民をエジプトから連れ出すリーダーとして選ばれた。 

3人の功績の説明後、ステファノは、「あなた方の先祖は、モーセをはじめ、今までことごとく預言者たちを裏切ってきた。そして、あなたがたも先祖と同じように、今の今まで、律法を守ってこなかった。」と、自身の考えを堂々と話された。 

じっと聞いていた群衆は我慢できなくなり、ステファノを都の外に運び、石を投げつけ、命を奪った。証人たちは着ている物をサウロと言う若者の足元に置いた。着ている物を脱いだのは、石を投げつけやすくなるためである。服を預かったサウロはこの時すでに仲間から信頼されていた。 

ステファノは、「主よ、この罪を彼らに負わせないでください」(60)と大声で叫び眠りについた。 

■まとめとして 

①ステファノは平安に満たされる一方で、群衆は激しい怒りに燃えた。正反対の光景であった。緊張の場面でも一点を見詰める人、信じる人がいる人、いない人と違いである。 

②主に全てお任せしたステファノは、自分のことよりも、自分の命を狙う人たちの罪を心配され「主よ、この罪を彼らに追わせないでください」と、大声で叫んで眠りにつかれた。死んだのでなく眠りについたのは、いつか目覚める。これは、天国の神の前で目覚めることを暗示していると思う。 

③ステファノが大声で叫ばれた「罪を彼らに追わせないで」は、近くのサウロの耳に届き、後の回心に繋がった、と信じる。主を信じる人の心からの訴えは、必ず他の人の心に届き、信仰が引き継がれることを示している。