使徒言行録10:1-48
                          小田弘平
 新約聖書には5人の百人隊長が登場するが、不思議に彼らはイエスたちの働きに好意を持っていた。彼らは50人から100人の歩兵を指揮する下士官であり、将校に昇進できないローマ軍の下積みの管理職だった。当時パレスチナはローマの属州であったので百人隊長は住民との窓口としてローマの圧政下に生きる住民の悲しみや喜びを見ていただろう。
 その中に新約聖書で百人隊長個人の名前が登場するコルネリウスがいた。彼はユダヤ教に関心を持ち、民に多くの施しをし、家族で絶えず祈っていた。コルネリウスがいつものように午後三時の祈りをしていると、幻の中で天使が「あなたの祈りと施しは、神の前に届き、覚えられている。ヤッファにいるペトロを招きなさい」と告げられる。そこで彼は3人の使いをヤッファに送る。
  一方、ヤッファにいるユダヤ人ペトロも幻をみる。天から大きな布が地上に降りてきた。中にあらゆる獣、地を這うもの、空の鳥が入っていた。天使から「身を起こし、屠って食べなさい」と言われる。ペトロはこの不思議な幻が何を意味するのか分からない。

ペトロが自分が見た幻は何かを考えていたとき、コルネリウスから

 

 

遣わされた3人が訪ねてきた。彼らはコルネリウスが「ヤッファにいるペトロを招きなさい」という天使のお告げを受けたという。ペトロは不思議なことだと思い、翌日使いのものに案内されて、ヤッファの兄弟たちとカイサリアに出かける。はたしてカイサリアのコルネリウスの家に着くと、そこにはコルネリウスが親類や親しい人とペトロを待っていた。
 この状況を見て、ペトロがヤッファで見た幻とは、神の福音をユダヤ人以外の異邦人にも伝道をせよということだった。当時、ユダヤ人は律法で外国人と交際したり、外国人を訪問したりすることは禁じられていた。しかし、ペトロは不安を懐いていたが、ユダヤ人の律法よりも神の教えに従った。ペトロはコルネリウスの真理を求める純粋な心に打たれる。集まっていた人々は、ペトロが訥々話す言葉に聞き入る。そしてペトロが語るキリストの福音を受け入れた。
  コルネリウスは真実な生き方を求めて、忍耐強く神に祈り続けていたが神はその祈りを聴かれたのである。コルネリウスはその喜びを、集まった親類・友人たちと共に分かち合った。